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ウラジオ短信

止まらぬインフレ耐え忍ぶ

1万円はある程度の時間がたっても1万円の価値がある。日本では、(友達に)貸したお金が半年後に返ってきたとしても、(ちゃんと返してもらえれば、)違和感を覚える人は少ないのではないだろうか。だが、(そんなことは)ロシアではありえない。今回の金融危機であらためて実感させられた。

昨年9月にウラジオストクに滞在したとき、物価が異常に高く感じた。安い食堂でお昼を食べても、円に換算すると1000円を超えた。ところが、9月以降にルーブルが暴落したせいで、1ルーブル5円だったのが、ことし2月には2.5円と、ほぼ半分に下落した。その結果、1月の出張では同じ食堂でお昼を食べても、600円ほどで済んだ。個人的には、今までが高過ぎたので、ようやく適正価格になったというのが実感である。

とはいえ、ルーブル換算でロシアの物価が下がったわけではない。ロシアでは食料品や生活雑貨、テレビや車に至るまで、輸入品が大多数を占める。自国通貨が下落すれば輸入品が値上がりするので、おのずと物価全体が上昇する。すると、輸入品だけでなく、あらゆる国産品や公共料金、サービス料金まで値上げされるのがロシアの不思議なところ。昨年9月に100ルーブルで3本買えた国産ビールが、ことし1月には2本しか買えなくなる。景気が良くても悪くても、ルーブルが上がっても下がっても、インフレだけは続く。

これは為替の変動がまともに物価に影響するロシアの構造的な問題でもある。ロシア政府がルーブル安を容認しているので、さらなるルーブルの下落と物価上昇も予想される。1998年のロシア金融危機の再来はないといわれるが、いつになれば良くなるのか、誰も分からない。ロシアの厳しい冬になぞらえてのことか、「春になれば」というフレーズをよく耳にした。耐え忍ぶ時期が続くのは、日本でもロシアでも同じだ。

2009/02/17 JSN 浜野 剛

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2009年2月17日掲載の記事を転載したものです。

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