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中古車輸入関税引き上げ反対で国産車がボコボコにされる

ウラジオストクを走るほとんどの車が、日本から輸入された中古車であることはよく知られている。ひと昔前は、日本ではすでにお目にかかれない角張った形のレトロな車が元気に走る姿を確認することもできたが、最近では、流線型の最新モデルの日本車が列をなして走っている。この街には日本からの中古車ビジネスで財を築いた人も少なくないが、今なおこのビジネスで生計を立てる人が口を揃えるのは、「先細り」の一言である。

ロシア政府は、国内自動車産業の保護を名目に、2年ほど前から中古車の輸入関税を段階的に引き上げている。この7月25日からは、個人輸入の際に与えられていた特権が廃止され、一説によると、通関にかかる費用は1500米ドルから3500米ドルも値上がりした。これでは、ビジネスとしての中古車輸入は成り立たない。

当然のことながら、ロシア極東で暮らす人々は、政府のこうしたやり方に不満を抱いている。七月にはナホトカやウラジオの輸入業者らが大規模な抗議集会を開き、政府批判を繰り返した。余談になるが、そこでスケープゴートにされたのは、国産車の中でもっとも有名な「ジグリ」という車で、コンクリートで固められたり、挙句の果てには、ヘリコプターで上空まで吊り上げられ、そこから落下させられるという悲惨な目に合わされている。

これらの抗議運動は、一部の野党勢力が主導することもあり、年末の下院選挙を控え、政府としては何らかの懐柔策をとらざるをえないはずである。ロシア極東地域では、中古車輸入に関連する何らかのビジネスで生計を立てる人は数万人いると推測され、政府への不満は、政府系与党の選挙結果にも影響するためだ。過激発言で知られるロシア自民党のジリノフスキー党首もつい先日ウラジオ入りし、政府の関税政策を強く非難し、有権者にアピールしている。

しかし当の政府には、「国内自動車産業を擁護し、外国自動車メーカーからの投資を呼び込むためには、安価な中古車が持ち込まれる状況をなくす必要がある」との見解を曲げる気配はない。これこそが、中古車ビジネス関係者に「先細り」と言わしめる根本的な理由であろう。日本と無関係な話題ではないだけに、今後の成り行きに注目したいと思う。

2003/08/15 JSN M野 剛

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2003年08月掲載の記事を転載したものです。

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