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ウラジオ短信

ロシアのバレンタイン・デー−「祖国防衛の日」

ロシア人にとってまだ馴染みの薄い「バレンタイン・デー」が終わるとまもなく、国民の祝日「祖国防衛の日」がやってくる。ロシアでは古くから、自らの社会と平和を守るとして、軍人は民衆から尊敬を集める存在であった。2月23日が正式に国民の祝日となったのは1922年で、このときの名称は「赤軍の日」。第二次大戦後「ソビエト軍および海軍の日」に改称され、ソ連解体後のロシアでは「祖国防衛の日」となった。時とともに、その名称だけでなく、社会的な意味も変化し、最近では、職業軍人だけでなく、潜在的に国を守る立場にある全ての男性に祝福の言葉とプレゼントを贈るのが通例となっている。

この日を前に、ロシアの女性は、夫や恋人、友人や同僚に贈るプレゼントのことで頭が一杯になる。郵便局や街中のキオスクの店頭には様々な種類のギフトカードが並び、花屋にはカーネーションの花が咲き誇る。(ロシアではカーネーションは「男性的」な花とされ、男性にプレゼントされることが多い)
プレゼントは、香水、ライター、時計、ベルトなどが主流だが、最近のウラジオストクでは、ユニークなプレゼントが流行している。「カラシニコフ」「マカロフ」といった銃器である。もちろん本物の銃ではなく、ギフト用に改造されたもので、特に上司や目上の人へのプレゼントとして購入する女性が多い。社長席の背後にカラシニコフが立てかけられてあれば、それだけで十分な威圧感があり、部下や取引先が言うことを聞かないわけにはいかないだろうというロシア流のジョークだ。値段は、小型のピストルが4000ルーブル(約1万5600円)ほど。この時期、ウラジオ一の目抜き通りで、カラシニコフを手にした上品な女性が歩いているのを目にすることも、そう珍しいことではない。

プレゼントを用意し、カードにお祝いの言葉を書けば、あとは当日を待つだけ。2月最終週のウラジオの天気は比較的穏やかなため、都会の喧騒をはなれ、郊外の別荘やピクニックに出かける人も多い。日が暮れ始めると、女性たちが運転する車に乗って、赤い顔をした「戦士」たちが帰還してくる。やがて目を覚ます頃には、すぐにやってくる「国際婦人デー」(3月8日)に何をプレゼントするか、女性たち以上に頭を悩ませることになる。

2003/02/21 JSNウラジオストク スベトラーナ・スクボルツォワ (翻訳 浜野 剛)

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2003年02月掲載の記事を転載したものです。

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