JSNトップページ > ロシアな日々 > ウラジオ短信

ウラジオ短信

ロシア文化の喪失に危機感

最近、弊社のウラジオ事務所に新しいスタッフが入った。彼の名前はザイツェフ・ドミトリー君(24)。極東国立大学大学院修士課程で「日本研究」を専攻をしており、将来は母校で日本史などを教えたいと話している。

彼が日本語に興味を示した理由が面白い。彼の家は代々医者の家系である。祖父が東洋医学の権威で、家には中国語の医学書があり小さい頃からその本を見て育った。彼は、その文字に興味を持ち、日本語を専攻したと言った。

彼を採用するにあたり、彼が書いた文章を読ませてもらった。最近の極端に西側に目を向けたロシアのマスコミに危機感を持ち、自国の急激な文化の喪失を心配する姿に共感をおぼえた。以下は、彼の文章からの抜粋である。

「今ロシアで放映されている映画の95%はハリウッドで制作されたものだ。そして、つい最近までロシアの子供の人気者は祖国の映画とアニメのヒーローだった。しかし今では成功、力持ち、頭脳明晰、裕福のシンボルになったターミネーター、ランボー、キングコングなどのアメリカのヒーローに変わってしまった。徐々に子供の意識にも、アメリカ製のもの、総論的に言えば、海外製のもの全てがロシア製のものより良いというステレオタイプが生まれてきた。それは育ちつつある世代が自分の国の文化、伝統、言語に対する関心を失う結果を招いた。そして今ロシアは、文化のアイデンティティーを探究しなければいけないという深刻な問題に直面している」。彼は、最後に「このように、世界的規模の情報伝達は好ましくない悪い影響を与えることもある」と結んでいる。

2001/03/19 JSN 田代雅章

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2001年03月掲載の記事を転載したものです。

<<ウラジオ短信一覧へ戻る



page top