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離婚の多さ故の「市民婚」

ここ数年、沿海地方、特にウラジオの結婚登録所の統計にちょっとした変化が起きている。正式に役所に登録する結婚が10年前の半分以下に減少し、かわって役所に登録しない「市民婚」が増えているという。

日本人にはあまり馴染みのないこの市民婚とは、法的には夫婦と認められないが、両親をはじめとする近親の了承を得、通常の結婚生活を送るというもの。日本人の感覚からすると、いわゆる「同せい」ではないかと思ってしまうが、互いを「妻」「夫」と呼び合い、昨今のロシアではある程度社会的に認知された結婚の一形態となっている。もちろん、ソビエト時代にも市民婚は存在したが、社会的な認知度は現在よりも低かった。

市民婚を選択する理由として、結婚(式)費用の節約、住居・車などを含む財産の個別管理、互いの権利の尊重などが挙げられる。しかし、その背景には離婚の多さがあるという。

今年の8月末までに、2462組の男女がウラジオ市内の役所に婚姻届を提出したのに対し、2097組が離婚届を提出した。離婚率の高さは認めざるを得ない。ある専門家は、「結婚」に対し懐疑的となり、「家族」を構築する際の義務や責任から逃れようとする若者の増加に懸念を示している。

とはいえ、若者の多くは「パスポートに押されたスタンプがなくても、互いの愛情さえあれば」との発想から市民婚を選択する。確かに、互いの愛情さえ失わなければ、最高の選択と言えなくはないと思うのだが・・・

2000/10/15 JSN 浜野 剛

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」2000年10月掲載の記事を転載したものです。

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