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元記者裁判あっけなく幕切れ

軍事機密漏洩で国家反逆罪に問われた太平洋艦隊機関誌の元記者、グリゴリー・パシコ中佐(37)の裁判の判決が7月20日に下りた。幕切れはあっけなかった。

検察側はなんとか彼をスパイ罪にしようとしたが、証拠捏造が発覚。法廷は検察側の資料を証拠物件として認めなかった。

しかし、「私利私欲のために職権を乱用し、国と国民に損害を与えた」という罪で懲役三年の判決が下りた。

ところが、ここでまたもやどんでん返し。現在ロシアで実施中の恩赦の対象になるということで、パシコ被告はその場で釈放されたのである。

私の知合いのロシア人は、「もっと厳しい判決を下すには決定的な証拠が必要。これに対して、弁護団はあくまでも日本人記者の出頭を要求する。しかし、日本側の出廷は期待できない。対日関係も考慮した結果、これ以上泥沼化させない方が良いと法廷が判断したのではないか。恩赦はまったくの偶然だろう」と判決を分析する。

今回の裁判でパシコ記者が有罪となったことに変わりはない。彼は前科者である。しかし、今回の判決は結果的に、彼がまるで「秘密警察に屈しなかった英雄」であるかのように世間に見せることになった。

被告側は有罪判決を不服として控訴する構えのようだが、自由の身になったパシコ氏が今後どのような活動を展開していくか興味のあるところだ。

1999/07/26 JSN 釈囲美法

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1999年07月掲載の記事を転載したものです。

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