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「北方領土」両国民に温度差

日ロ首脳のノーネクタイ会談からはや2週間。13日にはプリマコフ外相と小渕外相が「2000年までに平和条約の締結を目指す」とした先のクラスノヤルスク会談の合意を確認するとともに「着実な実施のために協力し、精力的に作業を進める」ことで一致した。

しかし、日本の各紙で1面を飾ったこのニュースも、ロシアではそれほど関心がもたれていないようだ。ロシア側にしてみれば、中ロ国境の画定の方がよほどホットニュースだということか。

ウラジオストク新聞などは、11日に辞任の意向を発表したチェレプコフ市長の記事が連日紙面をにぎわせている。今回の日ロ首脳会談について、ロシアの新聞では「橋本首相の対ロ外交新3原則は、中ロの急接近に刺激されたもの」という見方をしている。さらに、ロシア国民にとっての北方領土問題はあくまでも「領土の帰属問題」であり、「ソ連が不当に占領した日本固有の領土の返還問題」ではない。

首脳会談の前に沿海地方の新聞がウラジオで行った世論調査でも、「ロシアの統治下での共同開発を支持する」という人々が15%だったのに対し全面返還か一部返還論者はわずか3%しかなかった。

当初の予想をはるかに超えて、日ロ政府の関係は改善の方向をたどっているようだ。しかし、北方領土問題について、日ロ両国民の間にはかなり理解の差があるように思われる。

1997/11/16 JSN 田代雅章

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1997年11月掲載の記事を転載したものです。

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