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ウラジオ短信

分析力に欠ける文系記者の記事

仕事柄、さまざまな分野のロシア人と会う。私は理系にとんと弱いので、科学技術分野の方々には特に敬服する。例えば、私のロシア人の友人に、通信社の優秀な記者がいる。ウラジオストクの極東大学にはジャーナリズム学部があり、極東のマスコミ人の養成で有名だが、意外にも彼女は生物学部出身。驚く私に「今ロシアで活躍している記者には生物学部出身者が多い」と彼女は説明した。

ロシアの有力経済誌「コメルサント」の経済担当記者と話した折、同じ質問をぶつけてみたところ、あっさりと肯定した。彼自身、生物学専攻だった。

「事象の分析には理系の人間が向いている」といわれた。以上、私的交際範囲の統計なので真意のほどは何ともいえない。

しかし、ロシアの地方新聞では記事の内容がまだまだ情緒的で、分析力に欠けると思う。同じ紙面でもお抱え記者と大手通信社の配給記事との違いは一目瞭然(りょうぜん)である。

極東大のジャーナリズム学部OBに話を聞くと、彼らが大学で教わってきたのは「美しい文章の書き方」であり、記事の明確性ではなかった。もちろん文系記者の記事にも長所がある。人情味や人の良さを感じさせる点は好感が持てる。最近はアメリカの基金がロシア・ジャーナリズムの教育に力を入れ始めたので、良い変化を期待する。

1997/10/19 JSN 田代雅章

※この記事は、新潟日報紙の「環日本海情報ライン」1997年10月掲載の記事を転載したものです。

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