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モスクワ便り

【Volume.15】ペットサロン−“グレイシイ”

ペットサロン「グレイシイ」経営者キラ・ケドロヴァさんと壁に貼られた故愛犬「グレイシイ」の写真  モスクワの中心地にあるペットサロン「グレイシイ」に経営者のキラ・ケドロヴァさんを訪ねた。店内は広くいろいろなペットグッズがカラフルに並べられている。階下のグルーミングサロンではヨークシャーテリア等の犬達がグルーミングされていた。

 このサロン経営者、キラ・ケドロヴァさんのオフィスの壁には店の名前になったキラさんの最初のペットドックで、今は亡き「グレイシイ」の写真が飾られている。さっそくペットサロン経営の様子を聞いてみた。

 「私のペットサロンは犬に関するアクセサリー用品を主に輸入して販売しています。犬用の服、首輪、ベッド等あらゆるペットグッズを取り揃え、独自の輸入ルートで仕入れ、販売だけでなくグルーミングサービスも提供し始めたモスクワで最初のユニークな店です」「アクセサリー類はロシア製よりも外国製の方が品質やデザインがずっと優れています」

 「ロシア人はずっと昔からペットを買うのが好きで、社会主義の時代でもペットを飼っている人は多くいました。ドッグブリーデング業界も盛んで、 私も子供の頃から犬を飼っていましたがその頃は今のようにペットグッズやペットフード等はなく、私達と同じ食べ物を食べさせていました」

 キラさんは流暢な英語でインタビューに答えてくれた。彼女は大学で英語を専攻し、卒業後、科学研究所で通訳として数年働いた。そして更に大学院で英語論を学び、結婚して1年間アメリカに住む機会に恵まれた。その当時彼女が飼っていたプードルも当然一緒にアメリカへ連れて行ったと言うほど犬好きだ。アメリカに住んでグルーミングサロンに自分の犬を初めて連れて行った時、「これは帰国後自分が出来そうな仕事だと感じた」と言う。当時のモスクワにはグルーミングサロン等はなく、クチコミでグルーミングの出来る人に自宅へきてもらうのが通常だったそうだ。

 キラさんはアメリカから帰国後通訳の仕事をしながら、“ペットサロン”開業の構想を練った後、知り合いに話しかけ彼女の主旨に賛同してもらって出資をお願いしたと言う。

可愛らしいペットグッズの数々。子供服とまちがえてしまいそう。

  開業したのは1996年、資本金は10万ドル、全額がこの知り合いの出資で自己資金はなかったと言う。この知り合いは出資のみのパートナーで経営その他に関しては全て彼女にまかされていたそうだ。出資金は店の家賃とサロンにする為の改修工事費、ペットグッズの購入資金、店員及びグルーミング技術者の給料に費やした。その後、1998年のロシア金融危機の時このパートナーの出資者は手を引く事になり、彼女は全額を返却し個人経営者となり、現在彼女の年収は約7万2000ドルで今は収入も安定していると言う。

 「このペットサロンを始めた1996年ごろのモスクワは貧富の差が今よりずっと大きく、お金のある人達は珍しい物を買うのに値段を聞いたりはしなかった。彼らは品物を手にとって良いと思った物は数百ドルの物でも金額に関係なく買ってくれた。」「最初はグッズの販売が主で、店員4人にグルーミング担当者は一人だけだった」グッズは順調に売れ、グルーミング要望者も増え、今ではグルーミング技術者が4人に増えて、店員が3人、他にはアカウンタント1人とメインテナンス専門の男性一人で合計10人に増えたと言う。

 ペットサロン「グレイシイ」のグルーミング料金はプードルやチワワのような普通の小さい犬が1200ルーブル、ブラックロシアンテリアのような大きな犬が3000ルーブル、5月の統計では約350匹の犬をグルーミングがあったそうだ。モスクワでは現在5家族に1家族の割合で犬を飼っていて、約500万匹の犬がいると言われているそうだ。猫に関しては犬の数よりずっと多いそうだ。

  キラさんは英語がとても上手だからか「グレイシイ」顧客の中にはモスクワ駐在の外国人の顧客も多いそうだ。しかし98%ぐらいはロシア人だと言う。「モスクワのリッチな若い女性のお客様にとってペットドッグのアクセサリーは単なる犬のアクセサリーではなく、彼女のファッションの一部なので、人から見られる事をとても意識しています」「犬は外へ連れ歩くので、きれいな服や首輪等のアクセサリーが多く必要です」「外出の時だけでなく家庭内に必要なベッド等にもお金をかける人は多いです。例としては、若い女性のお客様で2000ドルのドッグベッドを買って下さった方がいました。このベッドはロシア国内の業者に特別注文で造らせた、ナチュラルウッドにシルクを使った物で、とても素敵だったけれど、とても高価なベッドでした」

人気商品の一つ、アメリカ人デザイナー作の6千ルーブルのドックバッグ

 今モスクワのペットショップ市場は満杯状態で、今後はいかに自分のサロンをお客様に印象づけるか、どれだけユニークで新しい商品を販売出来るかが今後の経営の課題だそうだ。

 彼女は「日本のペットグッズはとても良い物が多くあり輸入を考えているが、輸入ルートや、輸送手段がわからない」「アクセサリー類はペットフードと違ってややこしい輸入手続きやライセンスが必要ないし、日本製のデザイン、質は良いのでぜひ買いたい」と言う。

 今後の事業、投資計画を聞いてみたら、「私は今このペットサロン経営がとても好きだし楽しんでいるので他の業種に進出したいとは思っていない」と言い、ペットホテルの経営等も聞いてみたら、サロン経営とは全く別の業種に近く、私は興味がないと言って、自分が築き上げたサロン経営に自信を持ち、満足している様子だった。

 今年42歳の彼女は数年前に離婚をし、まさに一人で頑張っているそうだ。現在大学生の息子が経済の勉強をしているので今後は彼がサロン運営の良き相談相手、パートナーとなってくれる事を期待している感じだった。 (2007年8月)

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