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モスクワ便り

【Volume.11】女性専用タクシー −“ピンクタクシー”

 最近話題のタクシー会社経営者のオリガ・フォミナさんは34歳。 昨年8月、友人2人と2台の車で、女性専用のタクシー会社「ピンクタクシー」を興した。事務所を訪ねると、質素な建物の2階に小さな事務所があった。2部屋続きの事務所の、一部屋には2人の電話係の女性が一つの机に向かいあって電話を受けている、その横に置かれたソファーで部屋はいっぱい。隣のオリガさん専用のオフィスには、机とコンピューター、書棚だけ。

 オフィスの壁に貼られたピンクタクシーの宣伝ポスターと経営者のオリガ・フォミナさんオリガさんは会社設立のきっかけを話してくれた。「ロンドンには1995年から女性専用タクシーがあり、2年前に日本の鉄道の女性専用車両のことをインターネットで見て、女性専用のタクシー会社を興すことを思いついた。混雑した列車や、タクシー利用の際、性的に不愉快、不便な思いをしている女性はロシアだけではないと思った」と言う。

 モスクワは今や人口1100万人を数える大都市。昨年は東京を追い越し「世界一物価の高い都市」となったが、「タクシー」と表示された車を見かけることは非常に少ない。モスクワのプロのタクシー運転手は3500人とされ、一番大手のタクシー会社「ニューイエロータクシー」は1500台の車を所有するそうだが、市内の中心部でも滅多に見かけない。このタクシー不足の街で、市民はいわゆる白タクを利用する。白タクは4万台以上あると言われ、街中どこででも手を挙げれば乗れるので便利だが、女性にとっては安全面などの問題もあり、モスクワに住む日本人の間ではほとんど利用されていない。

 オリガさんは会社成功の理由を、「女性は他の女性達が何を必要とするかがよくわかる。私達は女性運転手を起用する事によって、女性利用者の安全問題を解決した」と話す。「ピンクタクシー」の運転手は全員が女性で、27歳から55歳。中には英語を話せる運転手もいると言う。

制服ではないそうだが車と同色のピンクのセーターを着て運転する「ピンクタクシー」の運転手 会社設立にあたって、いろいろな許可申請等をしなければならず、中には女性にはタクシー会社は出来ない等と言われた事もあったそうだ。しかし女性専用と言うことで競争相手とは見なされず、手続きが逆にスムーズに出来た利点もあったという。

会社をスタートさせた当時は、2人の女性運転手で1日に20回ほどしか電話がなかったのが、今では1日平均140回の電話がかかり、要望に応えられるのはそのうち70回ほどだそうだ。料金は時間制で1時間600ルーブルと、他社より少し割高になっている。 女性専用タクシービジネスは軌道に乗り、そのサービス業務内容も、子供の学校への送迎、花の宅配、週一回のスーパーでの買い物など、多岐に渡るようになった。

開業3ヶ月目には、「ピンクタクシー」同様の女性専用タクシーのライバル会社も現われ始めたが、プロの女性タクシー運転手はモスクワで100人以下と言われており、依然として男性運転手が圧倒的なようだ。

事務所で電話の応対をする女性達もそれぞれにピンクの服を着ていた

開業7ヶ月目の現在、20台のDaewoo車 と27人の女性ドライバーで対応しているが、4月末にはDaewoo とVolvo S40、V50の高級車に替えるそうだ。日本車が選ばれなかった理由を聞くと、車の買い替えにあたって企画書を書き、ボルボ社へ持って行ったところ、その主旨に賛同してくれ、また、ボルボ車の安全性や性能、アフターサービスが良好だったため、選んだそうだ。日本車は欲しいが、車の値段や修理費用が高いと言う。「ピンクタクシー」の走行距離は、この半年間で一台平均6万kmにも及ぶため、車の整備や修理にかかる費用はばかにならないと言う。

最後に、今後の会社経営について聞いてみると、既に次の会社の計画があると言う。「次はソチ近くの山の中に、フランスのクールシュベルのようなスキーリゾートのホテルを経営する計画があり、既に場所も決定している」 と、コンピューター画面で予定場所を見せてくれた。「そして女性の釣り人用に山小屋風のホテル経営もやってみたい」 と楽しそうに話してくれた。「女性は何かをしたいと思っても、話ばかりで何も出来ないでいることが多い。まず小さな一歩を踏み出すことが大事。そして少しずつ階段を上って行くのが成功の秘訣だと思う」 と後輩への助言を語ってくれた。 (2007年3月)

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